2009年07月16日
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おでんの東

Written By: 遠野秋彦連絡先

 僕らに最後にふるまわれたのはおでんだった。

 これを食べたら、僕らは旅立たねばならない。それが古くからの決まりであり、僕らの契約だった。

 蒟蒻・がんも・鳴門巻の串を受け取り、僕らはそれを一気に、あるいはいとおしみながら食べる。

 僕らはどこへ行こうか。

 北へ向かえば寒さが厳しい。

 南へ向かえば暑さが厳しい。

 西に向かえば夕日が眩しい。

 やはり東しかない。

 東へ行こう。

 東へ行こう。

 日が昇る希望の方角に歩こう。

 どこまでもどこまでも東に歩こう。

 たとえ、西に歩いた場合と行き着く先が同じでも。

 それでも東に歩こう。

 つかみ取るべき希望は目的地ではなく方角にこそあるのだから。

(遠野秋彦・作 ©2009 TOHNO, Akihiko)

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